傷病名辞典を見ていて、治療の概念には二つあると感じます。一つは癌や脳出血、心筋梗塞などの臓器や組織の物理的疾患に対しての手術や抗がん剤、標的薬など病気の原因を取り除く根治療法と、圧迫骨折や肋骨骨折、高脂血や症糖尿病、風邪や神経性胃炎など病気の原因ではなく、症状をどう抑えるかの対症療法がもう一つ。外来では8割の患者が原因のない、または、原因が取り除けない疾患という統計があります。胃が痛くて病院に行って、胃カメラやピロリ菌の検査、血液検査や尿検査などたくさん検査をしても、物理的な異常が見つからないと神経性胃炎や萎縮性胃炎などの病名が付き、痛くなくなるまで胃薬を飲みます。腰が痛くてレントゲンを撮って圧迫骨折と診断されても、コルセットをもらって骨が付くまで安静になります。医療の強みはいかに原因を見つけて、いかに取り除くことに力を発揮します。原因がないか分からない、物理的に取れない疾患には症状をコントロールすることが目的となり、それが8割の患者ということになります。ある先生が「患者は自分の病気を知っていて、ちゃんと治そうと働いている。医学はそれを手助けするのが仕事」と言っていました。リハビリ概論でも「無いものを考えるな。有るものを最大限生かせ」とあります。やはり、内科的にも外科的にも今ある部品を大事にして、上手に付き合っていくのが治療になるのでしょうね。